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2024.2.9 09:00ゴー宣道場

「図一つ『私』が丸見えよ」

皆さん、こんにちは。ukiです。
以前予告しておりました「図一つ『私』が丸見えよ」をお届けします。

早速ですが、実際に論文を評価する査読者になったつもりで以下の図をご覧ください。
皆さんならどのようにご覧になりますか?

何か青と赤の曲線があって、どうやら太い横線と交わるときのX軸の数値を読み取っているのだな。
それが正解です。
ですが、気づかれましたでしょうか?

横軸の数字の目盛りの並びがおかしい? こんな書き方ある?

しかし、そのグラフが
・査読済み論文のものだったとしたら?
・さらに、これをとある有名大学の教員が、
自分の論を補強するために出してきたものだとしたら?

(いや、でもなんかおかしい、内容を見てみよう)と追及するでしょうか?
(何か意味があるのかもしれない)と考えを翻すでしょうか?

納得するまで追求するのか?それとも、権威におもねるのか?

ここで一呼吸置いて考えることが
騙されるか、騙されないかの境目です。

実は私が似せて作ったこのグラフの大元は、
以下のリンクから見ることができる海外の査読済み論文のもの(2番目の図A)であり、
そのグラフをめぐって、昨年、実際にX上で喧々諤々の議論が巻き起こったのでした。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14552656/

私はこのグラフを見て
「あ、論文の著者やりやがったかもしれん。そして査読者も、編集者も!
と思いました。
(複数の人間が査読に関与しているのになぜこんなことが。。)
と思われるかもしれませんが、前回述べた論文の査読システムを理解していると、
全然ありえなくないことだと分かります。
※お時間のある方は前々回の査読システムについてのブログを参考にしてください。
https://www.gosen-dojo.com/blog/43422/

起こってしまった事実は
“変な目盛りのついたグラフのある論文が、査読を通過したこと”
ですが、これをうまく説明する、公のための科学者として最も優先的に考えるべき
(だが、本当はあってはならない)ストーリーは、
“査読を繰り返し、一人の査読者が、
最後の最後に、追加でグラフ作成を著者に要求してきた。
が、せっかく論文が採用されそうなのに、
著者は、作ろうとするグラフの数値が、これまでの実験結果と矛盾することに気づいた。
だから、辻褄を合わせるようにうまーく目盛りを書き換えた。
編集部にそのグラフを含む修正論文が送られてきたが、
時間のない、でも無報酬で査読を頑張る、早く自分のことをしたい査読者は、
さーっと見て、グラフも線が交わりそうな部分の数字をちらっと確認して「問題ない」
として、結果的に目盛りのずれを見過ごして、OKとした。
他の査読者は自分が指摘した内容じゃないし、
グラフを見なかった。忙しいから。
時間のない、でも無報酬で頑張る編集者は
「査読者たちがOKと言うならいいや」ということで採択した。”
です。

査読者は誤りを見抜いて、編集部へ「著者が改ざんをした疑いがある」と知らせないといけないし、編集者側も注意しないといけなかった。これは、本来世に出ることのない論文だったでしょう。グラフの内容が論文の大事なパーツであれば、論理が一気に崩れます。

さて、このグラフをXで引用したのは、
某有名大学所属の、ワクチンなどの研究をされている方ですが
カイジロウさんのブログにもあった『新型コロナmRNAワクチンのDNA汚染』については、問題ないとする立場の方)、
反論のために気が急いたのか、この論文のグラフを
「中身を精査することなく、反射的に」提示してしまったのかもしれません。
さらに、引用したグラフに関する数々の疑惑について、
数か月たった今も、彼はいまだ釈明も訂正もしておりません。
なぜでしょうか?
よほど都合が悪いんだろう、としか言いようがありません。
自説をサポートする根拠を失ったのですから。
しれっと流しているところをみると、
今までも他のところで同じようにごまかしてないか?という疑念も沸くのが当然です。
そして、彼の支援者たちはだーれも問題にしない。
まさにこれw 

※Tシャツはネットでは販売されていませんが、原画は絶賛発売中の絵本の『よしりん御伽草子』でどうぞ!

露になったことは一見何の変哲もない間違い・ミスかもしれません。
しかし、今回のグラフのように、
ちょっとした綻びの背景の事象を丹念に探っていけば、
いろんな人間たちの「私」の思惑が
恐ろしいほどに晒されてしまうことがあります。
そして、それを目撃したときに考慮すべきは、単に言ったこと、やったことだけではなく、
根本となる考え方や、「どこを目指しているのか?」という姿勢・態度でしょう。

 

【ukiプロフィール】
40代の関西在住の内科医、研究者。公論サポーター関西支部所属。ゴー宣は受験時代からの読者。哲学・倫理(医療含む)と人間観察、人との会話、自然、美味しい日本の食を愛する。本当は口が悪い。道場設営では受付を主に担当(そこでは口は悪くないですw ご安心ください)。

 

 


 

 

【トッキーコメント】
コロナ禍の最中、いわゆる「専門家」が「素人のくせに!」だの「査読済みの論文を出せ!」だのと言いまくっていたわけですが、その「査読済み論文」で、こんなことがまかり通っていたというのはさすがにびっくりです。
いや、ここでびっくりしていたのでは、まだ甘いのかもしれません。
こういうのを見ても、自然と普通に「やっぱりな」としか思わないくらいに、権威を根本から信用しないようにならないと、いけないのでしょう。悲しいことかもしれませんが。

 

 

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